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2008年7月28日 (月)

アンプの周波数特性

このことに気がついたのは2年前ぐらいだった。なんと40年以上も誤解していたのだった。

アンプの周波数特性のことである。アンプの周波数特性と言えば横一直線で一切の凹凸の無い平坦そのもの、というのが通念である。だから高音が出るとか低音の伸びがいいとかあるわけが無いのだが、実際はそういう現象がある。どうも感覚だけでなくそのように聴こえるので、やれ電源がどうのこうの、ケーブルがどうのこうの、金メッキがいいとか、どのメーカーのコンデンサがああだ、こうだ、というマニアの話題は尽きない。

ほんとうにアンプの周波数特性は平坦なのか?実際測定してそうなのだからそれ以外ないだろう、というのが正直なところだった。

ところがである。実際は違うのである。(のはず!)アンプの周波数特性が平坦だというのは「純抵抗8Ωを負荷して測定する」、と言う条件があり、これが曲者だった。

純抵抗負荷など実際はないのである。スピーカーのインピーダンスはよく知られているようにf0で100Ω程度の山を作り、400Hzあたりで最小の8オームとなり、それ以上の周波数ではボイルコイルのインダクタンスが効いて来て右上がりになる。

まあ、だいたいこんな感じだが、これが負荷されるのであって、決して純抵抗負荷のように平坦なものではない。ここが肝心である。たいていの人が知っていることだ。

ここまでは皆知っているのだが、もっと知っている人からは、アンプは定電圧動作をしているから、スピーカーのインピーダンスがどう変化したところで、常に一定電圧が出るから周波数特性は平坦さ、そんなことは常識だろうが、と反論され「あ、そうか」となってしまう。

そうじゃないのです。アンプの増幅率を考えましょう。アンプの増幅率の式には多変数であっても負荷抵抗が分子に来るよう(つまり比例するように)になるのが普通です。真空管でもトランジスタでもそうです。

だとすれば、増幅率=ゲインは負荷抵抗比例になるじゃありませんか!つまりスピーカーインピーダンスの周波数カーブのような特性がそのままアンプの周波数特性になることを意味しています。

それは事実と違う!と言う反論がありえます。実際にスピーカーを接続してアンプの周波数特性を測定しても平坦だったぞ!と強烈に言われるに決まっています。

ここから精密な話になります。

そう見えるのは強烈な負帰還がかかっているからです。凹凸はNFBで均され、平坦になってしまうのです。

だったら、やっぱり「平坦」でいいじゃないのか?

いいえ、すべてが強烈な負帰還であるとは限りません。軽い負帰還アンプもあれば、無帰還アンプも好まれています。それでも純抵抗負荷で測定すると平坦なので気がつかないのです。

軽帰還や無帰還が好まれると言う事実は何を物語っているかと言えば、スピーカーインピーダンスの影響をモロに受けるということでもあります。このアンプとこのスピーカーの組み合わせは絶妙だと、といういわゆる「組み合わせの妙」などの評価ができることになります。

ここでは理屈では表現できない世界なのだと、いう思い込みと、アンプは純抵抗負荷で測定されることへの無批判な態度が背後にあります。

定電流駆動アンプなどということを提唱する人も現れました。私もかつてはスピーカーのボイスコイルは電流比例で駆動力が発生する原理から、電流駆動であるべきだ、と考えたことがあります。そうすると出力インピーダンスは無限大ですから、スピーカーをつなげば、アンプは完全にスピーカーインピーダンスの周波数特性そのものになります。これははなはだしく異常な動作ですが実験した人のレポートでは「劇的に改善した」と言うのです。典型的なドンシャリ特性なのにですよ。

いまではアンプの音色を相当程度にスピーカーインピーダンスカーブとの関連で説明できると考えています。無帰還アンプなど乱暴すぎるアイデアだと言いたい。軽帰還アンプの同類だ。

聴いて好ましければいいじゃないか、と言う意見に対しては「ああ、そうですか」と言うだけです。

それじゃあ、理想的なアンプ回路形式はなんだといわれれば、負荷抵抗でゲインが決まる、方式でないことが肝要になるので、FETで終段と分離した増幅形態が望ましいということで、FETアンプは注目しているし、D級アンプと言われるデジタルパワーアンプ方式にも関心がある。

トランジスタアンプとFETアンプの音は確かに違う。これはスピーカーインピダンスの影響をどれだけ排除しているかの違いと見る。

同じ事をスピーカーネットワークでスピーカーインピーダンスの平坦化に取り組んでいる人がいるが、それも理由は同じことである。アンプ増幅率がスピーカーインピーダンスに比例するから、その影響を避けたくてやっていると言うことができます。

私の場合はトランジスタアンプで終段は3段ダーリントンとしてループゲインを稼ぎ、深い負帰還をかけて定電圧駆動を目指す方式なので、重帰還アンプです。

真空管アンプは出力トランスと言うやくざな回路要素を必須としているため、はじめから深い負帰還はかけられない。したがってスピーカーインピーダンスの影響を強く受けるし、第一出力トランスのヒステリシス歪みが除去できないので独特の音色がトランスの癖が出やすいのです。これが癒しの音だとか、なんたらかんたら、またその風貌からくるレトロなイメージも人気がある。HiFiとは別次元のことなので「ほう、そうですか」と言うだけです。

どういうわけか、このことはマニアの間でも論議されていないようで不思議な感じがするが、「アンプの周波数特性は平坦」、と言う思い込みの呪縛から抜けられないのかもしれない。

なにしろ私でも40年以上そう思っていたから。忸怩たる思いだなあ。

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コメント

御説はわかりました。ただし世の中に最近はインピーダンス変動のないスピーカの割合が多くなっていますのでそれで検証できるでしょう。うちのはすべてそうです。

ヘッドホンです。信号系に直列に1kΩほどはいりますし、f0が10khzくらいですし。コンデンサヘッドホンも関係ありませんよね。あれは原音と比較できます。高城さんがやってましたでしょ。

gkrsnamaさん、コメントありがとうございます。
どんなスピーカーでもf0あたりの変動は避けられません。10倍ぐらい(80Ω)はあるでしょう。忠高域はネットワークで制御できますが。
ヘッドホンは駆動原理が違います。おっしゃるとおりf0が数kHzと高く、しかもあまり変動がありません。それでヘッドホンアンプには出力ラインにわざわざ30Ω程度を入れる人がいますが、保護用としてはわかりますが、ただ6dB低下するだけなのでやはり無いほうがいいと思いました。

電圧出力アンプは帰還がかかろうと無帰還だろうとスピーカーインピーダンスの影響をモロに受けますよ.無帰還と言っても最終段はエミフォロですよ.

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